
イントロダクション
あやしき紅に魅せられた紅花の守人たちが
織りなす奇跡の物語
室町時代に中近東からシルクロードを経て伝わってきた紅花。皇室で珍重されたその色は、第二次世界大戦中に国によって栽培を禁止され、戦後は安価な化学染料の台頭によって、継承の危機に瀕していた。しかし誰に頼まれるでもなく、山形の小さな農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、今では世界的な農業遺産として注目され始めている。
手間暇を惜しまず栽培して生まれた紅の染料からは、極くわずかな紅色しかとれない。利便性から遠く離れた紅花文化を、慈しみながら守り継ぐ人々の姿を4年の歳月をかけて記録した映画『紅花の守人』が、ついに完成した。
ナレーションは映画『おもひでぽろぽろ』でタエ子役の声を担当した、歌手で女優の今井美樹が参加している。監督は『世界一と言われた映画館』など、山形を舞台に数々の映画作品を発表している佐藤広一。
化学染料では生み出すことのできない繊細な色あいを表現するため、昼夜を問わず染めに没頭する守人たちが色彩巡礼の旅へ誘う。

予告編
スタッフ





出演者
その老いた人の赤い手
映画『紅花の守人』への思い
長瀬正美・長瀬ひろこ

その老いた一人の男と出会ったのは、もうずいぶん昔のことになる。老いてはいたが節くれたその手には思わず見惚れるくらいの力が満ちていた。何かを生み出す手だということが私にも分かった。不思議に思ったのは、その手がいつも赤く染まっていたことだ。老いた人は顔に刻まれた皺をさらに深くして笑った。「紅花だ。紅花の色が染みついたのだ」。紅花…紅花…。 口の中で何度もその花の名前を呼んだ。私は25歳だった。老いた人は私に多くの人と出会わせてくれた。紅花で染めた赤い糸を私の前に放ってくれたのだ。赤い糸を手繰り寄せるたび、迎えてくれる人たちは経験を話し知識を与えてくれた。
大きな戦争があったあの時代。この地を選んだ紅花が途絶えてし まったあの時代。種を守った「紅花の守人」の信念に私の心は震えた。
その種の子孫を私は播く。半夏に咲く一番花 いにしえ を口に含み花を摘む。古の人たちが私の周りに集っている。何も言わずただ私を見届けている。紅花の棘が手を刺す。摘んだ花びらの中に手を埋め、疼く痛みを癒す。紅花を洗うと黄みが かった花弁に赤が宿る。この赤で誰かが染め物をする。その染め物を誰かが身に着ける。古来紅花の赤はそうやって受け継がれてきた。その赤は無くてはならない赤だったから。
老いた人はもうすでにいない。私に教えようとするでもなく、ひたすら淡々と自分の仕事を していた。自分のするべきことを。
私の歳はあの老いた人の歳に近づいている。 私はあの老いた人のようになっているだろうか。握った両手をそっと開いてみる。老いた人のあの手のように、私の手は赤く染まっているだろうか。





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劇場情報


自主上映情報

◯[山形県]高畠文化ホールまほら 2026年7月25日(土) 10:00〜、14:00〜
佐藤監督と守人達の舞台挨拶・トーク&サイン会
2026年より配給:CINESCO