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   盆栽――― 字のごとく
“盆”とは陶器で作られた鉢、
“栽”とは人の手を介して植えられた草木

「この2つのバランスに“品格”や“格調”が備わっているもの。それが美しい盆栽です」
上品な着物姿、涼しげな目元に笑みを浮かべながら説明を始めるのは、盆栽美術家の川崎仁実さん。

“敷き居が高い”印象が盆栽にはある。その歴史や伝統、様式を踏まえながらも、余すところなく良さを伝えたい、と活動する23歳。現在、盆栽展の企画や、コンペティションへの参加、カフェやヘアサロンなどでの盆栽コーディネート、執筆、製作など活動は多岐にわたる。「盆栽はとても手のかかるもので、1日たりとも手が離せないんです。樹齢300年という盆栽もあります。それだけ毎日毎日、人が能動的に働きかけ続けたという積み重ねの証しですよね。様式として完成されたものを持ちながらも、常に進行形なんです」それが、格調につながっていく。川崎さんは自らが生まれ育ち、自分の感性や考え方にも大きな影響を与えてくれる京都という街に例えてくれた。京都の持つ雰囲気は、一朝一夕のものではない。細やかな近所付合いや、そこで生まれてきた風習や習慣を、長い年月をかけて積み上げてきた。だからこそ醸し出される空気があり、根底にあるのは変化を厭わない、しなやかさと芯の強さ。一鉢の盆栽にも、同様の時の重みがある。

「盆栽との出会いは高校生の時です。ふとのぞいた盆栽展で“スゴイ”と。人間より長生きする盆栽を目の前にして、自分は日々成長できているのか、と盆栽を通して自分と向き合った時、一生付き合えるって確信したんです」以来、盆栽との付合いは7年。専門誌の企画に関わるかたわら、独学で盆栽を勉強してきた。ファッションビルでの個展を開くなど、本格的に活動を始めて2年。その間実感したのは、“盆栽とは何なのか”をまず広く伝えていく必要性だった。「ですから、盆栽そのもの表現するというよりも、自分というフィルターを通して、盆栽との掛け橋という役割を果たす時期なのだと思っているんです」盆栽に全くチャンネルがない人が、川崎さんの活動に触れ、お店の内装に盆栽を取り入れたい、などの依頼も増えてきている。それが盆栽の可能性に直結している。

盆栽を育てるには、手間も暇もかかる。長い時間をかけて、自然美を凝縮させる。そのままにしていれば、大きくなってしまい、大きくなってしまえば決して小さくはならない。枝や根の張り方、伸び方、成長の度合いなど、その木の個性と向き合いながら、慈しみ育てなければ、人が木を枯らしてしまう。「ですから、まずは鑑賞する楽しみを知っていただきたいと思うんです。盆栽展はかなりの数が開かれています。まずは足を運んでいただければいいですね」人間が同じ大地に立って樹木を見るとき、決して俯瞰できない。鉢という空間の中に壮大な景色を作っていく盆栽も、上から見下ろすのではなく、下から見上げるように鑑賞する。「その時の鉢と木のバランスを見て、“これが好き”という木を見つけてください。そこからさらに、“なぜ、自分はこの木を好きだと思ったのか”と盆栽に働き掛けていけば、深い感動を味わえます」そこに投影される、見る者の自然に対する感性、それこそ日本人が長い間、培ってきた格調でもある。

文:力武賢一郎
生活芸術社 『自己表現』7月号 より